【キャリアガイド】イントロ:ガイドを読むべき理由

This is a Japanese translation of “80,000 Hours Career Guide: Intro

生涯を通してあなたがキャリアに費やす時間は合計約8万時間だ。週に40時間、年に50週間、それを40年間。その時間をどう過ごすかというのは、人生において最も重要な決断の一つだ。

賢く選択できたならば、やりがいのある面白い人生を送れるだけでなく、世界で最も喫緊の問題の解決に貢献できるだろう。しかし、どう選択すべきだろうか?

この問題に答えるべく、我々は独立非営利団体を設立し、オックスフォード大学の学者と共に10年以上にわたって研究を重ねてきた。目的はただ一つ、あなたが可能な限り最大のインパクトを与えられるよう支援することだ。

その過程で、我々は幾つかの驚くべき発見をし、1,000万人以上の人々が我々のアドバイスを見てきた。

点の一つずつが、あなたのキャリアにおける8万時間のうちの1時間を示している。キャリアをほんの1%でもよりインパクトのあるものや、やりがいのあるものにすることができるのであれば、その方法を考えるためにキャリアの1%の時間を費やす価値がある。およそフルタイムの5か月分、800時間に相当する時間だ。幸い、このガイドの所要時間は約4時間だ。

ガイドの役立て方

2011年当時、我々はイギリスのオックスフォード大学の学生だった。どうすれば好きなことをしながらポジティブなインパクトを与えられるだろうかと、我々は考えていた。

非営利団体で働くべきだろうか?大学院に行くべきだろうか?高収入を得て、慈善活動を通じて貢献することを試みようか?諦めて洞窟に籠って瞑想するべきだろうか?それとも全く別のなにか?我々は色々と考えた。

手元にあった大抵のキャリアガイドは、特定の仕事に就く方法については書いていたが、そもそもどのような仕事を目指すべきかについて助言しているものは殆どなかった。知り合いのほとんどはちゃんとしたキャリアアドバイスを参考にすることもせず、友人同士の相談に頼っていた。

キャリアを使って善いことをするということで、医学やソーシャルワーク、教職、または(なんともスリリングな)企業の社会的責任に携わる仕事に就くことを提案された。だが、これらのキャリアの価値は認めるとしても、我々にはもっとインパクトのある選択肢があるように思われた。

例えば、歴史上最も影響力のあった人物らは、全く別の分野から来ていることに我々は気付いた。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアは、米国の公民権運動を形成した牧師である。マリー・キュリーは、放射能の研究を通じて、生命を救う医療技術を開拓した科学者である。

80,000 Hoursの創立以来、我々のチームは何百人もの専門家に話を聞き、何百時間もかけて関連文献を読み、様々な仕事について独自の分析を行ってきた。むろん、学ぶべきことはまだ沢山ある。これらの問題に決着をつけるのは困難であり、我々も幾つか間違いを犯したが、我々ほど長い時間をかけてこれらの課題を研究した者は他にいないと思う。

我々が学んだことの一例として:

  • やりがいのあるキャリアを望むのならば、「情熱に従え」という言葉に惑わされてはならない。

  • 慈善活動家よりも官僚である方が、より善いことが成し遂げられるかもしれない。

  • 世の中をより善いものにする従来のアプローチの多くは、実際にはうまくいかない。

我々はまた、自分が得意なことを見つける方法や、より成功する方法などという、誰もが一度は問うであろう質問に取り掛かる、より研究に裏付けられた、願わくばより良い方法を考案した。

我々が学んだ最も重要なことの一つは、特定の問題に対して取り組んでいる人が既に多くいる場合、その問題の解決のための最良の機会は既に取られている可能性が高いということだ。しかしそうだとすれば、豊かな国で、健康や教育のような最も一般的で人気のある問題に取り組んでも、最大のインパクトを与えることはできないということだ。代わりに、もっと型破りな問題を見つける必要がある。

一方、見過ごされている重要な問題に真に取り組む方法も見つけられた。例えば、世界で最も貧しい人々に焦点を当てることで、自分にとってやりがいのある仕事をしながら何百人もの命を救うことは本当に可能なのだ。

さらに、我々の世代は文明の未来全体に影響を及ぼしかねない問題に直面していること、にも関わらずそれに注目している人は比較的少ないことが分かった。これには、COVID-19よりもさらに深刻なパンデミックや、人間よりも賢いAIの誕生(2014年当時より、我々は人々にこの問題に取り組むことを推奨してきた!)といった問題が含まれる。実際、我々はこれらの問題こそ、多くの読者が最大限の変化をもたらすことができる場所だと考えている。

今日に至るまで、何千人もの人々が我々のアドバイスに基づいてキャリアプランを大きく変更してきた。その中には次のパンデミックの防ぎ方を研究している人、行政機関の政策の中で無視されている分野に取り組んでいる人、画期的なテクノロジーを開発している人、そして我々の研究を利用して自身の道を切り開いている人等がいる。

学べること

このキャリアガイドはキャリアプランにおける最も重要な基本概念を網羅することを目的としている(もっと掘り下げた内容について知りたい人は、上級者向けシリーズポッドキャストを参照)。

最初の記事は、より長く充実する仕事の特徴についてだ。

第1部:理想的な仕事とは?

次の5つは、世界に最もインパクトのある選択肢について:

第2部:一人の人間が変化をもたらすことはできるのか?

第3部:どんな仕事に就いても真にポジティブなインパクトを与える方法

第4部:焦点を絞るべき問題の選び方

第5部:世界における最大かつ緊急の問題とは?

第6部:最も多くを助ける仕事とは?

次の4つは、自分に最適な選択肢の見つけ方、スキルへの投資方法について:

第7部:自分を有利な立場に置く仕事とは?

第8部:自分に合ったキャリアの見つけ方

第9部:どんな仕事に就いても成功する方法

第10部:キャリアプランの書き方

最後の2つは、行動の起こし方、夢のキャリアをスタートさせる方法について:

第11部:仕事を得るにはどうすればいいのか?

第12部:コミュニティの役立て方

あるいは、以上12記事を1ページ(所要時間2分)にまとめた要約を参照することも可能だ。

ガイドの使い方

各記事の所要時間は約10から30分だ。一つの週末に全てを一気読みすることも可能であるし、一週間に一つずつ、四半期に渡って読むことも出来る。

また、各記事の最後には、幾つかの演習問題も用意されている。それらをこなすことは、あなた自身のキャリアにこのガイドから得た概念を適用し、後々テンプレートを使って新しいキャリアプランを書き出すのに役立つだろう。

もし、人生計画を変更することを考えていたり、我々が推薦する問題に取り組むことを考えている場合、我々のチームに1対1の面談を申し込むことをお勧めする。メンターや仕事、助成金の紹介など、あなたの計画をチェックし、実行に移す手助けをしてくれるかもしれない。

あるいは、良いことをする方法についての知識をもっと深めたい人は、上級者向けのシリーズ最も喫緊の問題一覧インパクトの持てるキャリアの調査、ポッドキャスト・インタビュー、トピック別のリサーチを参照して、何が自分に最も役に立つのか確認することもできる。

ガイドの対象読者

このガイドは特に、世界をよりよくすることを重要な目標とするのに十分な保障と能力に恵まれた、20代の英語を活かしたい学生や新卒者に向けられている。だが、核となる考え方の多くは、どのような年齢や境遇の読者にも当てはまるものであり、他にもあらゆる種類のキャリア選択に関するアドバイスもある。

補足情報

根拠となる調査

キャリア選択は非常に個人的なものであるため、我々が簡単に助言できない質問もたくさんある。我々の目的は、あくまで幅広い読者に関連するキャリアに関する質問に答えることである。これらの質問に答えるべく、我々は以下のものを参考にしている。

  • 専門家への取材ポッドキャスト上で150以上の取材例を聞いたり、匿名取材の結果を見ることもできる。我々の取り組みは、特定の質問に関する異なる複数の専門家の意見を統合することから始まる。

  • 学術文献 — 関連する文献が存在する限り、我々は学術文献を参照している。例えば存亡脅威、各分野における生産性の分布、適切な意思決定の仕方などにおいてだ。また、我々の協力者には、学術的専門家、さらに他の非営利団体や企業の専門家も含まれる。

  • 読者へのアドバイス — 2011年以来、我々は3,000人以上の人々に1対1でアドバイスをしてきた。その中の多くとはまだ連絡をとっている。これにより、よくある間違いや、時間が経つにつれて最初の決断がどう変化していくのかを把握することができた。

我々が取り組んでいる全ての質問に対して確信をもって答えることは不可能だ。だが、我々は自分たちの研究原則に基づき、研究の証拠の出典を統合することに最善を尽くしている。また、読者自身が自分の評価を構築できるように、我々の推論の最重要点を強調するようにしている。

アドバイスの解釈の仕方のアドバイス

我々の扱っているトピックは複雑なため、過去に我々のアドバイスを我々の意図しない方法で解釈する読者がいることに気付いた。そこで、実際に話を進める前に留意すべき点をいくつか紹介する。

  • 我々はこれまでに間違えたこともあったし、これからも間違えることだろう。確かに我々はこれらの事柄について多くの時間を費やしてきたが、まだまだ学ぶべきことはたくさんある。我々の立場は長年に渡って変化してきたし、扱われている問題の性質上、自分たちの答えに70%以上の自信が持てることは滅多にない。よって、論拠の強さやあなた自身の既存の知識に応じて、我々の考えとあなた自身のこれまでの立場をうまい具合にすり合わせていく必要がある。

  • 普遍的に通用するキャリアアドバイスを与えるのは非常に難しいことである。特に、あなたにとって最適な選択肢はあなたのスキルや状況、そして訪れる機会の具体的な詳細によって大きく異なるものである。そのため、我々がキャリアBよりもキャリアAを強く推奨したとしても、キャリアBにおける最善の機会は、キャリアAの典型的なものより良いかもしれない。また、あなたの個人的境遇を鑑みるとキャリアBの方が向いているかもしれない。そのため、我々の触れる具体的なオプションはあくまであなたの個人的なキャリアアイディアのリストを補完するものと捉えてもらいたい。さらに、キャリア選択における多くの問題は、相反する考慮事項のバランスの問題であることも心に留めておいてほしい。例えば、自分を低く見積もりすぎる読者は、より高い目標を目指すよう励まされる必要があるし、自信過剰な読者は、より良いバックアッププランを立てるよう奨められる必要がある。人々はXを過小評価しがちだ、と我々が言えば、Xを重要視しすぎる読者も必ずいるので、その人らには逆のアドバイスを言わなければならない。

  • 我々は特定の層を対象読者としている。大卒者(あるいはその途中過程の人)で、(不偏的な立場から)ポジティブなインパクトを与えることをキャリアの重要点としている人(特に我々が最も奨励する問題領域で)、主に裕福で、英語が堪能な、自分のキャリアに分析的なアプローチを取りたい人だ。時に、私生活を大切にすることが優先事項となることもあるだろうが、それで罪悪感を抱くようなことがあってはいけない。また推薦キャリアのリストなど、我々のアドバイスの中には特別に優秀な人々を対象としたものもある。一応、我々の中心的な対象読者層に当てはまるほど、アドバイスはためになるだろうが、我々が書いた内容の多くは社会に貢献したいと考える全ての人に有益なものである。

  • インパクトを高めることは長期的な目標の一つに過ぎない。世界で最も喫緊の問題に取り組むことは我々が考え得る最も意味のある挑戦の一つだが、なんだか参ってしまうこともある。我々はインパクトを高めることは、人生における幾つかの目標の中の一つにしか過ぎないとみなしているので、善いことをするという観点からは理想的ではないことをすることも多々ある。たとえインパクトを与える事だけが唯一の目標だったとしても、そうするためには何年も持続できるものであることが不可欠なのだから、個人的な優先事項も配慮しなければならない。

  • 完璧さよりも、着実な進歩を目指すこと。我々の取り上げるアイディアをいかに自分の人生計画に取り組めるか考え、適切な機会を見つけるのには長い時間がかかるかもしれない。できることは常にいくらでもあるため、完璧主義者になりすぎたり、人と比較しすぎてはきりがない。我々のアドバイスを利用する場合、目標は(未知で達成不可能な)完璧なオプションを見つけることでも、自分の比較対象よりも多くのインパクトを持つことでもない。そうではなく、自分の制約を踏まえて、自分にとって現実的かつ理想的なキャリアに向かって堅実に前進することに集中することだ。

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