5億人の犠牲、もう誰も死なせない

This is a Japanese translation of “500 Million, But Not A Single One More

By jai 2014年 12月10日

私たちはその人たちの名前を知ることは決してないだろう。

当時は記録するための文字すらまだ存在していなかったため、最初の犠牲者は記録できていないだろう。その人たちは皆、誰かの娘や息子であり、誰かの友人であり、周囲の人々から愛されていた。そして、痛みで苦しみ、発疹に覆われ、混乱し、怯え、なぜこんな目に遭うのか、どうしたらいいのか全く分からないまま、狂気的で非人間的な神の犠牲となったのである。どうすることもできなかった。目に見えない怪物に対して反撃できるほど、人類は強くもなく、知識もなかった。

そいつは、古代エジプトにおいては、奴隷もファラオも見境なく攻撃した。ローマでは軍隊を難なく壊滅させた。シリアでもモスクワでも多くの死を招いた。インドでは500万人が死んだ。18世紀には毎日1,000人のヨーロッパ人を殺した。5千万人以上のアメリカ先住民を殺した。ペロポネソス戦争から南北戦争に至るまで、どんな武器や兵士、どんな軍隊よりも多くの兵士と民間人を殺戮した。(とはいえこれによって、最も愚かで空虚な人間が敵に対する武器としてこの悪魔を利用しなくなったわけではなかった。)

文化は発展と衰退を経たが、そいつは居残った。帝国は勃興と没落を経たが、そいつは大いに栄えた。さまざまな思想が盛衰を経たが、そいつはそんなこと気にもとめなかった。死を招き、重傷を負わせ、広まった。古代の狂気の神は見えないように隠されて、人類は戦うことも、立ち向かうことも、理解することもできなかった。唯一無二の存在ではなかったが、最も破壊的な存在ではあった。

長い間、希望はなかった。ただ、生存者たちの苦しく、空虚な忍耐があるだけだった。

10世紀の中国で人類は反撃を開始した。

狂気の神の呪いから生き延びた者は、二度と呪いをかけられないことがわかった。生存者たちはそいつの力の一部を自分の身体の中に取り込むことで、そいつから守られていた。しかも、その力は、傷の残骸を摂取することで共有できるのだ。もちろん、神を倒さなければその力を得ることはできないため、ある程度の代償を伴った。しかし、人類の期間でいえば、小さな戦いであった。

16世紀までにはその技術は、インドに伝わり、その後アジア、オスマン帝国、そして18世紀にはヨーロッパに広まった。1796年、エドワード・ジェンナーによって、より強力な方法が発見された。

ある考えが定着し始めた。もしかしたら、この古代の神を殺すことができるかもしれない。

囁きは声となり、声は叫びとなり、叫びは戦いへの雄叫びとなり、村や都市、国家を席巻していった。人類は協力を開始し、この加護の力を世界中に広め、全人口を保護するために技の達人を世界各地に派遣した。かつて敵同士であった人々が、この一戦のために共通の大義を持つようになった。この古代の敵にたった一つの命でも与えれば何百万人もの人々を危険にさらすことになるため、政府はすべての市民に対して自らを守るよう義務づけた。

そして、少しずつ、人類は敵を退けていった。泣き悲しむ友は少なくなり、重大な障害を負う隣人は少なくなり、自身の子どもを埋葬しなければならない親は少なくなった。

20世紀初頭、人類は初めて世界の全地域からこの敵を追放した。人類はこの奮闘を通して幾度となく挫折した。しかし、子どもや愛する人が二度とこの悪魔を恐れずにすむ世界を夢見て、決してあきらめずに戦った人たちがいた。人類が一丸となって悪魔に立ち向かうことを呼びかけたビクトル・ジュダノフ(Viktor Zhadanov)、敵を全滅させる戦略を考案した偉大な戦術家カレル・ラシュカ(Karel Raška)、そして最後の数日間の奮闘を導いたドナルド・ヘンダーソン(Donald Henderson)。

敵は弱くなっていった。数百万が数千になり、数千が数十になった。そして、敵が襲ってくれば、数十人の人が出てきて対抗し、敵が危険にさらすかもしれない人々を皆守った。

敵の最後の襲撃は、1977年のアリ・マオ・マーリンであった。その後数ヶ月の間、献身的な人々が周辺地域を掃討し、敵が苦し紛れに残存しうる、ありとあらゆる最後の隠れ家となる場所を捜索した。

何も見つからなかった。

35年前の1979年12月9日、人類は勝利を宣言した。

この悪であり、記憶の彼方からの恐怖であり、世界から5億人を奪った怪物は滅ぼされたのだ。

あなたもこの偉業を達成した人類の一員なのだ。世界で起こる問題との戦いに挑むと宣言するとき、人類が団結すれば何を成し遂げることができるのか決して忘れないでほしい。

天然痘根絶記念日おめでとう。

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